《MUMEI》
みずいろ
あなたに恋をすると苦しくなる。
それでも恋してたい。
好きだから。
あなたが大好きだから。

−6月−
あの深夜の出来事以来
咲希は航平に急接近していくようになった。
航平がバスケ部に入部し
男子バスケ部と女子バスケ部は一緒に練習する時が多かった。
それに2人が付き合ってるという噂が流れている。
優衣によるとその噂は嘘みたいだけど・・・。
優衣は私が航平のこと好きとも言っていないのに
気付いている。
もしかしたら気を遣って嘘ついてるのかもしれない。

「みんな席に着けー!」
矢野先生が元気よく言った。
「今日は修学旅行のグループ決めをする!」
この学校の修学旅行は毎年7月にある。
「男女同じグループでもかまわん!」
航平はどうするんだろ・・・?
「1グループ4人くらいで。みんな仲良くなーー」

みんなが席から離れそれぞれ相談する。

「航平一緒に・・・「航平、同じグループになろ!」」
またしても咲希が遮った。
「えっ・・・。」
「いいでしょ☆」
「でも・・・。」
「ぅ・・・うん・・・。」
「ヤッター☆」
咲希はとびっきりの笑顔をみせた。

どうして「うん。」って言うの?
胸が張り裂けるように痛くて・・・。
この気持ちはただの嫉妬なのかもしれない。
自分の無力さに涙さえ出なかった。

私は結局、優衣と俊介と拓也と一緒にすることになった。
私の恋は何にも進まないのに
優衣はこの2ヶ月間で俊介という彼氏をつくった。
優衣が羨ましくて眩しくて・・・。
拓也は私の良き友人。
誰よりも優しくて正義感が強い。

優衣がそっと私の肩に手を置いた。
何も言わなかったけどその優衣の優しさが嬉しくて
「ありがとう。」
そういうしかなかった。
俊介と拓也は顔を見合わせていた。
何も分かっていないのだろう・・・。

−放課後−
「何かあった、佳奈?」
拓也だった。
部活終わりの帰り道だった。
「ずっとここに?」
「何か今日の佳奈、変だったから・・・。」
「・・・。」

二人は公園のベンチに座った。
この公園はよく航平と遊んだ場所。

「何となく佳奈が沈んでる理由分かる。」
「・・・。」
「俺そういうのよく分かんないけどさ、シケてたって何も始まんねーしさ・・・。」
「・・・。」
「ごめんな。俺、航平みたいにカッコイイこと言えねーわ・・・。」

そう言ってふと空を見上げた拓也の横顔がとてもキレイだった。
(拓也だったら苦しむことなく恋が出来るのかな)
一瞬その言葉が頭の中によぎった。

「ありがとう、拓也。」
「おぅ!また何かあったら言えよ!」
「うん☆」

拓也は時間を気にしながら帰って行った。
塾だったのかな・・・?
それなのに私の話・・・。

気がつくと拓也のことばかり考えていた。

何?
私、航平のこと好きじゃなくなったの?
ただ航平のこと好きっていう女子ができたくらいで・・・。

どうしたの、私・・・。

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