《MUMEI》
あお
本当に好きなの?
2ヶ月前なら何の迷いもなく「はい」と言えたはずなのに・・・。
どうして迷ってるの・・・。

いつかどこかで誰かが言っていた。
恋の絶好のチャンスは相手が体調の悪い時だ。

本当にそうだ。
私が落ち込んでいる時に拓也が声をかけてくれた時から
少しずつ歯車が狂ってきてる。

優衣に言ったらどういうのだろう?
「いっそのこと拓也と付き合っちゃえば?そのほうが佳奈も幸せだよ☆」
多分そう言うだろう・・・。
でもそれじゃ私は何の為にこの5年間航平を想ってきたの?
そんなの分かんないよ・・・。

−修学旅行−
私達の学校の修学旅行先は大阪だ。
ビルがいっぱい建ってて人もたくさんいる。

「すごーい!」
思わずつぶやいてしまった。
「うん!すげーな☆」
「えっ!」
見るとそれは航平だった。
私はすぐ視線を反らし優衣の方へ行った。
どうして逃げてるのか分からない。
でも航平といるといつも咲希のことが頭から離れなくて・・・
結局自分が傷つくのがいやだからだと思う。
(もし今、咲希さえいなければ・・・)
何度も私は思った。

最高の思い出を作るはずだったのにどうしてこう上手くいかないの?

−修学旅行1日目の夜−
拓也と一緒にいた。
外出禁止と言われていたが先生の目を盗んで宿から出てきた。
すごい夜景がきれいな場所だった。
でも街が明るすぎて星は見えなかった。

「きれーい☆」
「だな!」
「ねえ。何で私を呼んだの?一応私、寮長だからバレたらマズイんだけど・・・。」
「・・・俺さ・・・佳奈が・・・航平のこと好きって知ってる。」
「・・・。」
「でも俺やっぱり佳奈が好きなんだ。」
「えっ・・・。」
「航平が佳奈の中では1番なんだって何度も自分に言い聞かせたけど・・・それでも好きなんだ!」

真っ直ぐ私を見る拓也の瞳が真剣で一途で汚れを知らない純粋な瞳だった。
私にはどうしたらいいのか分からなかった。

「ありがとう。考えさせて・・・。」

そう言い残して私は宿に戻った。

それからの修学旅行。何だか拓也と気まずくなって・・・。
まだ私の心が揺らいだままで・・・。

修学旅行は私にとってある意味思い出に残るものとなった。

−終業式−
いよいよ1学期が終わる。
早いといえば早かった。
今までで一番波乱だった。

私はこの日優衣に修学旅行の1日目の夜の出来事を全て話した。

優衣は
「・・・拓也ならきっと佳奈を幸せにしてくれるよ☆」
優衣の顔が一瞬暗くなったのは気のせいなのだろうか・・・。
航平だったら良かったのに・・・。
そう思っているのだろうか・・・。
「うん☆」

私は拓也と付き合うことにした。

航平を忘れる為
航平から逃げてる私を正当化する為

ただ私は弱かった。
一人じゃ辛くて寂しくて孤独に勝てなかった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫