《MUMEI》

 





涙なんて出なかった。
辛い絶望があたしを取りこんで、泣く気力すらでなかった






病院の先生にこれからどうするんだと言われたが、どうすることもこうすることも選択肢は無い。










「二人で生きていく」









そう決心した。
するしか方法は無かったといった方が正解かもしれない





あの家を、弟を

小さくて消えてしまいそうな思い出を







あたしは護ることにした















―――――パチッ




目を覚ますと暗い天井が目の前にあった





「ハァ………」









額に手を置くと、しっとりと汗がうかんでいた。











「………………もう、声すら思い出せないや」







ハハ、と空笑いを含み両目を腕で隠す。









何年も経っているのに呪いがかったように執着してしまう。あの時の雨を思い出してしまう………











「…………いい加減に消えてくれ……………」






暗い暗い気持ちが吐き出した言葉は誰にも届かず消えていった。











△▼










「なんだその頭」

「あ?なめんなあたしの剛毛」

「重力に逆らってんぞ」








居間に行くともう水輝は起きていて朝御飯を作っていた。


い―匂い









「あたしは剛毛だってのに、何?アンタのその猫っ毛ムカツクわ――」

「性格の捻れが毛根にきてんだろ」

「お―いそれじゃあたしどんだけ性格ひん曲がってんの?」











ちゃぶ台に朝御飯を置いていく







「やっぱ味噌汁は落ち着くわ〜」

「ジジイか」

「何でジジイにした?普通ババアだろ?いや、ババアも嫌だけどさ」








もくもくと食べる。正直料理が苦手なあたしは弟の水輝に任せている


あ―――チックショウ旨いなッ









 

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