《MUMEI》

 




「いってきま――――す」

「おぅ」








ガララと、立て付けの悪い玄関の引き戸を閉めながら出ていく。水輝は眠たそうに欠伸をしながら見送る










△▼












「いらっしゃいませ――」





ちゃんと笑顔で営業。
お金のために営業。


服装はロリータでした




一番キツかったです。










「色ターン☆こっちこっち」

「はぁい、ただいま」






ここでのコードネームは色タンだ。どうだ?気持ち悪いだろう 名付け親は店長だぜイェア










「カプチーノと…お前は?」

「コーヒー」


「かしこまりました―。カプチーノ1つとコーヒー1つですね―」







坦々と注文を聞き仕事をこなす。









「ねぇねぇ、なんかサービスとかないの?」






客が肘をつきながらそう言い出した。


たまにいるんだ こういった面倒な輩が…









「すいませんここわこういった格好していてもただの喫茶店なのでサービスとかは致しておりません」

「はぁ―?そりゃ冷たいんじゃない?色タンよ―」








この店、オタクのやつも来るがそこらへんの兄ちゃんも利用するから簡単には引き下がらない連中が多い。










「………………………えっと、何コレ」

「サービスです」

「何でよりによって頭皮マッサージ?」

「期間限定です。やったねお客さん」

「マジで!?嬉し――…ってんなわきゃあるかァァ!」






冴えたノリツッコミを見してくれるお客。なかなか上手いね











午後12時

段々人が混雑してきて忙しくなってきた。歩きづらい白い靴で店内を歩きまわる




すると、バイト仲間の子に呼び止められた








「ねぇ色ちゃん色ちゃん」

「はい?」

「なんか9番テーブルのお客さんが色ちゃんを指名してんのよ」

「指名制度ってこの店にありましたっけ?」

「まぁまぁ、カッコイイ人だったから損はないと思うよ?はい、オレンジジュース」

「オレンジジュース?」

「その人の注文品」

「イケメンとオレンジジュースって奇妙な組み合わせ…」










なんでこれをチョイスしたのか、
なんであたしを指名したのか、




分からないことだらけのまま9番テーブルに向かう。








 

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