《MUMEI》

 






「座れば?」

「え!はい…」






そう言われたのでカウンター席にこじんまりと座った










「よォお嬢さん、名前なんて言うんだ?」







厨房からズイッと顔を近付けるから驚いて肩を強張らせる







「色です。笠岡色」

「しきちゃんか――カッケーな!」

「よく言われます。男の子みたいだって…」

「女がカッケー名前だとギャップがあっていいじゃね―か」

「…………そんなこと初めて言われました」

「お?ほんとか、ハハハハ!」







頭をがさつにワシャワシャと撫でられ髪がグシャグシャになった。












「ここのラーメンは味噌が美味しんだ―」

「へ―……」

「てことで池島く―ん、もやし味噌2つ――」

「お―う」

「えぇぇッ!?」







あたし1ページたりともメニュー見てないんすけど!?

どゆことッ!?













「オラ食え!」





ドン!とラーメンの入った器が、カウンターに置かれた。


湯気が立ち込めて早く食べたいという欲求にかられる…






パキンと割箸をわって麺を掴み上げ、口に入れる。






「美味し…」

「でしょ?幸せ感じるよね―」





―――――幸せ。




この人でもそんなことを思うのか……







無意識のうちに黒尾さんの横顔を見ていたら、視線を感じた黒尾さんがこっちを向き呆れた表情で、




「君はいつもそうやって探るように人を見るね」

「!!」

「僕だって人間だよ―?ちゃんと感情はあるよ」

「す、すいません…」

「あら?素直だね」

「自分もやられたらムカツクから……」

「ちょっとは常識持ってんだね―」

「あなたに言われるとは思いませんでした」









 

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