《MUMEI》
接点
これは江戸が始まったばかりの日本でのお話。


少年がその女性と出会ったのは、繁華街を少し離れた
人の行き来がまばらになった道の、夕暮れ時のことでした。


黒い頭巾をかぶった女性が、身を潜めるようにかがんで
なにやら苦しそうにしているのです。

少年は近付きました。

「あの・・・ どうしたのですか?・・・」

顔を上げた女性は息苦しさで黒い布を、少しはだけさせていた。
少年は思わず息を飲んだ。

(綺麗!!・・・こんなに綺麗な人を初めて見た!!)

女性は苦しそうに顔を歪めて、再びうつむいてしまいます。

「あの!? どうしよう!? お医者を連れて来ます?」

女性は苦しそうに身を震わせて、必死に耐えている様子です。

「待ってて。すぐにお医者を・・・誰か助けてくれる人を呼んでくるから!」

少年が走り出そうとすると、その腕を女性は素早く掴んで

「よい!! 人を呼んではならぬ。 時期、治る・・・」

息絶え絶えにこう伝えたのでした。


着物から延ばされた腕はあまりに白く、細く、掴まれた力強さとの
ギャップに少年は戸惑いました。

そのまま女性の斜め前にしゃがみ込んで、額に滲む汗をぎこちなく拭い
始めた少年を、女性は拒みませんでした。

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