《MUMEI》 別れ陽が落ちようとする頃、2人は出会った道を歩いていました。 「はい、手拭い。 これを渡さねばな」 「いいよ、どうせ口実だもの」 手にしたそれから、女性と同じ香りが立ち昇ってきた。 「でも・・・せっかくだから受取る。 また会えるよね? 今度はいつ?」 「そうじゃな・・・今度は、僕が私を身請けに来る時としよう」 「え!? そんなの嫌だ!まだまだ先だもの! それまで待てないよ!!」 「身請けの話は偽りだったか?」 「偽りじゃないけど、僕が大人になるまでにはまだ、もう少し時間が・・・。 館に行きたいけど、子供じゃ門前払いされて近付くことも出来ないんだよ?」 「待っておるぞ。 来たらな、幸せなキスをして、僕を思い出させておくれ」 「僕もまたここで待ってる。 また来てくれるよね? 今はそれしか方法がない」 「私は、私の場所へ行かねばならぬ。 会いたくば、僕が来るのじゃ」 「分かった、行く。 でもここでも待ってる」 黒い頭巾で顔を覆う女性の表情は分からなかったが、笑みを浮かべている ように少年は感じていました。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |