《MUMEI》
笑顔
俺は、江上が泣きやむまで

ずっと隣にいた。

だいぶ、江上は落ち着いてきたようだ。

俺は「落ち着いた?
何かあったなら聞くよ。」と優しく言った。

江上は「大丈夫!何でもないよ。」と笑ったつもりだろうが

目には、また涙が込み上げ

それを必死に我慢するせいか

少し震えていた。

その精一杯の笑顔は

見ていて痛々しかった。

俺は、江上の頭の上に手を ぽんっ と置いた。

そして言った。

「無理には聞かない。
でも泣きたい時は我慢せず泣きな。」

江上は「ありがと。」と言って

今度は、本物の笑顔を俺に向けた。

その笑顔は

俺にある決心をさせた。

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