《MUMEI》
初めて見る顔
「職業病って・・・。」

亮の頭の中に『ホスト』という言葉が浮かぶ。スーツを着こなした姿といい、色男と言われる部類の顔といい、なんだかしっくりくる気がした。まあ、本物のホストに会ったことはないのだが。

「和は、美容師やってんだよな。」

将治の言葉に、思わず和の顔をじっと見つめる。
美容師。なるほど、それはそれで納得できる。

「何ですか。僕が美容師じゃ、おかしいですか。」

明らかにむっとしたような声をだす和に、亮は大きく首を振ってみせた。

「いや、むしろ似合うなって。」


一瞬、和の目が大きく見開かれた。口元がふわりと緩んで、優しい微笑みになる。嬉しくて仕方ないような、満面の笑み。

「ありがとうございます。」

今度は、亮のほうの時間が止まる番だった。
笑うと、和の顔は一気に幼くなる。元から童顔ではあるのだが、大きめの瞳がきゅっと閉じられて、よけいにあどけない。どちらかというと愛らしいに近い笑顔に、亮が言葉を失っているうち、和はまた大人びた表情に戻ってしまった。その落差に、亮は気付かれない程度に息をつく。
なんというか、この男は・・・。

「あ、で大悟はペットショップの店員やってんの。」
次々と話し始める将治に、曖昧な相づちを打ちながら、亮の目はぼんやりと和を見ていた。

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