《MUMEI》
ラストシーン
だれかのおかげで乱れた授業になっているが、激村は諦めずに理想の白熱教室を目指した。
「クライマックスとラストシーンは密接な関係といえる」
「はい」仲田はまじめにノートをとる。
「ロッキーのようにクライマックスからそのままラストシーンへ行く作品も多い」
「エーイドリアン!」
「うるさい」
「エーイドリアン!」
「火剣。授業を妨害するなら教室から出ていけ」
しかし火剣は余裕の笑顔だ。
「だれがハエだ?」
「ハエ?」
「今五月蝿いって言ったじゃねえか」
「火剣さんもふざけてないでお手本になるようなシーンを語ってくださいよう」
怒る仲田に、火剣はサーベルの柄で襲いかかった。
「シーン! シーン!」
「やめてください…何考えて生きてるんですか?」
「火剣」
激村が飛ぶ前に火剣はやめた。
「お手本だな。あるぜ。コマンドーのように、もう軍人はやめる。愛する娘と、新しい恋人と、三人で幸せに暮らすということをセリフなしで、表情や目配せだけで表現したラストシーンは、さすが超大作のラストシーンだぜ」
激村と仲田は驚いた。火剣がさらに続ける。
「恋人は娘に優しく手を差し伸べて、娘も明るい笑顔でそれに応じる。そのセリフなしのワンシーンは、未来の母娘になるということを暗示しているように俺様には見えたね」
「火剣」
「何だ激村?」
「真冬に桜が咲くな」
「咲かねえ!」火剣が怒る。「せっかくまじめな意見を言ったのにそういう態度なら期待に応えるぞ」
「やめろ」
だが火剣は暴走した。
「よし。人の作品ばっかり語ってねえで俺様がクライマックスとラストシーンの模範愛撫を見せてやろう」
「模範演舞です」仲田が顔をしかめる。
「やっぱりクライマックスはヒロインが万事休すのシーンだろう」
「喋るな」
「邪悪な犯人に全裸にされ、手足を拘束されてあわや犯される女刑事」
「やめましょう」
「うるせえ。普通のギャルならやめてやめてと哀願するところだが、女刑事は意地とプライドが邪魔して哀願できない」
「もういい」激村が歩み寄る。
「本当はやめてとお願いしたいが、警察官は絶望的な状況でも最後は犯人を逮捕しようと考える」
火剣は止まらない。
「しかし犯人に上に乗られ絶体絶命の大ピンチ。女刑事は口を真一文字にしてもがく。犯人を睨みつけながらもがく。これはやめてやめてと哀願するよりもはるかにエキサイティングなシーンだぜ」
激村が聞く。
「クライマックスはわかった。で、ラストシーンはどうなるんだ?」
「犯人の男は抜群のテクニシャンでよォ、無念にも女刑事は耐えきれずに仰け反ってしまって最後は連続アクメで…」
ドロップキック!
「エーイドリアーン!」
火剣は叫びながら教室の端まで吹っ飛んだ。
「ただ単にそれがやりたかっただけか」
「激村先生も飛ぶのが遅いですよう」仲田が文句を言った。
火剣がKOしていることを確認すると、激村は小声で告げた。
「今のうちに伏線とラストシーンの関係を語ろう」
「ぜひお願いします」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫