《MUMEI》
予防線
時間を気にする私にとって、この急展開は歓迎するものだった。
無意識に、口角が上がっていることに気が付いた。


>そうね。 悠輔とはいずれ会うと思う。 長くバーチャルして
ればいいってものでもないしね。  ・・・会う?」


出会い系を通じて、本当か嘘かの区別もつかない情報だけを
頼りに直接会うこと。 決してこれが初めてではない。

リアルな姿を見た瞬間に、全てが幻想だったと思い知ったこと
もある。



以前会った人はこんなことを言っていた。


「会うまでに2ヶ月メールでやり取りした娘が居てさ。 
写真も可愛かったし、その時は自分の中では結構盛り上がって
いてね。 相手も俺のこと気に入ってくれてたし。 
でもさー、会った瞬間に完全に”終わったな”って思ったんだ。 
話してみると、メールの雰囲気とは、これまた全然違うし。 
いやー、バーチャルって恐いなって思ったよ」


そんな彼は私のことを気に入ってくれたようだったが・・・・

続けてこういった。


「本当に、2ヶ月間無駄にした」


その言葉に全てが込められているように思えて、私は彼との
恋愛をイメージ出来なくなったが、現実を受けれる機会になる
ことは間違いないと同意し、笑顔を返していた。



リアル悠輔はどんな男性なのだろう?
 

年下と付き合ったこともあるが、せいぜい3歳の違い・・・。
12歳差なんて全くの未知だ。 


今はバーチャルだから燃え上がっているけれど、会った瞬間に
「うわー、おばちゃんだね〜。お疲れさま〜」って去っていく
のかしら。(笑)  それならそれでいいけれど・・・。
幻想を追っていただけのことだから。  目覚めは早いうちに。

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