《MUMEI》
有利
「なんで、黒焦げ?」
「さあ」
ユウゴはペンライトを取り出して、その男と近くの床を照らした。
男は完全に炭化している。
そして、周りの床には真っ直ぐに延びた焦げ跡が見えた。
不思議な焦げ跡だ。
今まで何度も見てきた爆発とは違う。
「もしかして」
その跡を見たユキナは顎に手をあてながら口を開いた。
「火炎放射機、とか?」
「……マジ?そんなんまであるわけ?」
「だって、それっぽいじゃない?」
「……たしかに、ぽいよな」
ユウゴは頷いた。
狙った所だけについた焦げ跡。
そして、炭になった人間。
「すごい威力だな。じっくりあぶったのか」
「……やめてよ」
「ああ、悪い。しかし、あいつらこのプロジェクトの実行委員の身内とか言ってたな」
「なんか、優遇されてるみたいだったね」
「ああ。このプロジェクトはみんな平等に参加させられるもんだと思ってたけどな」
「どんなことでも、コネのある奴が有利」
「世の中、不公平だよな」
「だね」
二人は黒焦げの男を見下ろしながらため息をついた。
「行こう」
ユウゴは駅員室に戻り、金づちを手に取ると、目的のロッカーへと向かった。
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