《MUMEI》
初対面
初めて降りる駅の、改札でのご対面。
 

「ごめんね、俺、凄く目が悪いから、美香子が見つけてね」


こんなメッセージを電車の中で受取った。


>金髪にロン毛ならすぐに分かると思うわ。 
着いたら何口に居るかを教えてね。



電車に揺られながら数回のやり取りの後、目的地に到着。
改札を見渡してもそれらしき人物は見当たらなかった。
仕方なく電話を掛ける。


トゥルルルルル・・・・


「もしもし? 美香子です。 今着いたのだけど何処にいるの?
北口で良かったのよね? ・・・ん〜? どこ?それ。 
ないわよ?  出口の方? あ、分かった」


目の前を金髪の男性が携帯で会話をしながら通り過ぎたのだ。


私は後を追って男性の肩に手を掛けた。


「こんにちは」

「あ!あ〜っ!!全然気付かなかった!! どこに居たの?」

「それはこっちのセリフでしょ。 どこからともなく出てくるんだもの」


悠輔は口元近くまでマフラーを上げて、長い金髪を前にたらしていた。
一見すると、変装に慣れていない芸能人のようだ。
はっきりとした大きな瞳が、まじまじと私を映し出している。
私は視線を外に向けた。


「とにかく無事に会えて良かったわ。 お腹が空いてるんでしょ?
とりあえずどこか入ろうよ。 何食べに行く?」


「朝からなんも食ってないからさ〜、ほんと腹減ってるよ。 
何がいっかな。 焼肉が食いたいな」


私は痛い程の視線を、気にしない素振りで続けた。


「さすがガッツリ系ね。 お仕事忙しかったの?」


悠輔は時間帯が不規則なお仕事をしているらしい。
この日、待ち合わせは15:00だったが、その日の14:00
まで勤務し、直行で今に至るという訳だ。

「うん。仕事はいつも忙しいよ。 人が居ないからメチャクチャな
シフトになんだよ。 
今日も20時間労働・・・眠いし疲れているしぃ〜、、、
今、いい感じにフラフラしてるよ」


「・・・大丈夫? 今日じゃなかった方が良かったんじゃない? 
今日はご飯食べて早く帰って、お休みの日にまたゆっくり会おう?」

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