《MUMEI》
年下の男の子
悠輔はニコリと微笑んだ。


「いや、いいんだ。 いつもこんな感じだから。 
美香子と会う時はいつでも直行パターンしか仕事上出来ないからさ。 
とりあえず焼肉食いに行こうぜー。 待っててね、携帯でナビるから」


ようやく視線が外されて、ほっとしながら、慣れた手つきで携帯を
設定する悠輔を眺めた。 写真以上の美男子だった。


綺麗な子・・・。


「あったー! 美香子、焼肉屋みっけたぞ! 意外と近いね。
はい、じゃぁこの携帯持って。 俺を焼肉屋まで案内してね」


私に携帯を手渡すと、空いている手をぎゅっと握り締めて笑った。


「はい、連れてって♪(ニコニコ)」


・・・完全に悠輔のペースだ。


「連れてってって、私、地図苦手だもの、分からないわ。
携帯ナビ使ったこともないし。 悠輔、慣れてるんでしょ?」


携帯を返そうとする私を制して、握った手の指を絡ませてきた。


「俺ね、目が0.02の上に寝不足じゃん。 しかも空腹で・・・。 
実は限界なんだよね。 俺が焼肉屋に着けるかどうかは美香子に
かかってる! この手を離したら俺遭難するから、命綱と思って
美香子もしっかり握っていて」


確かに徹夜明けで空腹で視力も悪いときたら、断る方が鬼である。


「悠輔さ、コンタクトしないの? 普通に危ないんじゃない?」


「いやぁ〜、コンタクトなんて恐くて出来ないよ。 目に異物を
入れるんだよ? 考えただけで目が痛くなる」


「そういう問題?(笑) 眼鏡は?」


「仕事中ならしてるよ。 でも今日はしない。 美香子と初めて
会うっていうのに、眼鏡かけてたら失礼だもの」


「全然失礼じゃないわよ! 大丈夫、危ないから逆にかけて」


絡ませた指が更に深くなり、少しだけ甘い声に変わった。


「んーん。 美香子と手を繋いでいるから、今日はいいんだ」

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