《MUMEI》

.












「…ありがとう」

「…いや……それより」

俺は手すりに掛けられた制服の上着を見る






秀一はそんな俺に構わず、続けた






「俺…佑二が好きだよ」



「!」








告白の場所…




トイレかよ。










秀一は俯いて




少しの沈黙の後に








また口を開いた

「…抱け」

「は…?」






今の秀一の声は…脳にちゃんと行き着かなかった









「俺を抱けよ…佑二」

「…?!?」







俺を見つめる秀一の瞳はいつも通りに




真っ直ぐで




どこか寂しげで。


ただ違うのは




いつもより幾分か潤んでる気がしたこと











「それって…」


俺はわけが分からなくて。




そしたらまた秀一の両手が俺の頬を包んで、
自分と視線を合わさせた







「俺の身体、佑二無しじゃいられなくしろよ」

「………」



そして自分も上着を脱いで、掛けた








「…イヤ、か?」


「そんなわけ…っ!」








俺はなんで慌ててるんだ?









秀一は確かに此所にいて、






こうして見つめあえんのに








触れられんのに









「…佑二?」



気付けば秀一の頬にそっと触れて、

その触れてるところを(秀一が言うには)不安げに見つめてた。






「でも俺、何も分からない…」



発した言葉も曖昧にしか覚えてないけど



「大丈夫…俺に任せて」












秀一の柔らかな言葉とキスに頷いたのは、覚えてる

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫