《MUMEI》
メランコリー
「そんなことはないよ。 まぁ・・・
バンドやってた頃は確かにグルーピーに囲まれてチヤホヤ
だったけど」


「グルーピー!(笑) へぇ〜〜。 
確かに悠輔とこうして歩いていると、芸能人とお忍びデート
しているみたいだわ。 ちゃんとファンを大切にしてあげた?」


「放っておいた」


「駄目じゃない!!(爆笑)」


「あんまり絡むと「好き」とか言われるから・・・。 
俺、結構女にシビアだよ。 
好みじゃない娘から告られたら、無言・無表情で去っていくし。 
まぁまぁなタイプの娘でも「で?」って態度とるから、みんな
「失礼しました!!」って撤退していくんだよね。
俺が優しくするのは、好きになった一人の人だけなんだ」


いいことを言っているように聞こえるけども、何気に酷いこと
も言っている。
でも悠輔の言ってることは事実だろう。
『高嶺の花』という形容がピッタリなルックスを持っている。


指を絡ませ繋いだ手をちらりと見た。


この手に触れて、こんな風に隣を歩くことを夢見て、悠輔で
心をいっぱいにして毎日を過ごした娘が、どれだけいるだろう。
きっと沢山・・・。 そんな気がする。


どう頑張っても、届かない想い。 
私はそのせつなさを嫌という程知ってきた。

どれだけ夢見ただろう・・・  私だって。
好きな人と手を繋いで、隣を見ると、好きな人が居て、同じ
歩調で歩いて・・・そんな、身に余るほどの幸福な時間を。



「美香子、焼肉屋さんー!」


「あ、はいはい。 何か見つからないわよう。 データ古い?
この辺なんだけど・・・もう開いてるお店に入っちゃおうよ」


「どれどれ・・・ほんとだ、この辺なんだけど、それらしき店
ないね。 俺も焼肉どうでもよくなってきた。 適当に入ろ」

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