《MUMEI》

私達は食事を済ませて、共通の話題にもあった『カラオケ』
へと足を運んだ。


「さぁ、悠輔くん! まずは1曲、聴かせてちょうだいね!」


カラオケマシンを目の前に差し出すと、そのままテーブルの
端へと移動した。


「ちょっと!?(笑)」


「いいの。 お話がしたい。 歌は最後の30分で十分だよ。
せっかく2人きりになれて、目の前には美香子が居るんだよ?
美香子だって俺をリアルにする為に、今日会ってるんでしょ?」


そう言って、素早く両手を繋ぎ合わせた。
まさかの展開に動揺する気持ちを抑えながら


「・・悠輔、マフラー取ろうよ。 食事の時もこのままだったね?」


繋いだまま手を首元へと持っていった。


「マフラーは取らない。 このままでいいの」


その手はまた、悠輔の膝の上へと強引に下された。


「何で?取ろうよ。 暑くない?」

「暑いけど・・・いいの。 少しでも顔を隠したいんだ」

「何の為に?」

「恥ずかしいから。 隠さないと落ち着かないの」


そう言って片方の手を解いて、髪で顔を隠す仕草をした。


「悠輔はとても綺麗じゃない? 凄く綺麗よ。 隠してちゃ
勿体ないって」


私は顔にかかった髪を少し横に流した。

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