《MUMEI》
自己紹介
「今、何してたの?」
「あんたに関係ないでしょ」
「気になるじゃん」
「気にしなきゃいいじゃん」
かなり感じの悪い彼女の態度にタイキは腹が立つよりも呆れ返った。
初めて会ってから、ずっとこの調子だ。

「なあ、なんで毎日そんな怒ってんの?」
彼女が怒るだろうと予想しつつも、ついツルリと聞いてしまった。
すると彼女は予想通りにタイキを睨んできた。
「あんたがウザイからだよ」
「……ふーん」
「つうか、あんたはなんで、わたしに構うの?」
 彼女は睨んでも動じないタイキが気に入らない様子だ。
しかし、タイキは怯むことなく真っ直ぐに彼女を見つめた。
 今のタイキには彼女の鋭い睨みに恐怖するよりも、しなければならないことがあるのだ。
「な、なによ」
僅かに身体を後ろに引く彼女。
「実は」
タイキはゴクリと唾を飲み込む。
「実は、その端末を見せて欲しいんだけど」
鼻息荒く、タイキは彼女の膝にチョコンと乗る端末を見た。

どうやって作ったのだろう。
この小さな機体にどれだけの機能がついているのか。

…知りたい…。

「……キモ。あんた、オタク?」
彼女の声にハッとタイキは我に還る。
「ち、違う!僕はただ、あんたが最初からこれ作ったっていうから。どんなふうになってんのかなって…」
 慌てて言い訳をするタイキを疑わしげに見ながら、彼女は「はい」と端末を差し出した。
「えっ!いいの?」
「別にいいよ。ロックかかってるから中、見れないし」
「いい、いい。外見だけでもいい」
大喜びで、タイキは端末を受け取った。

 彼女の端末はタイキの物よりかなり軽い。
側面にはいくつもスロットがついている。
既製品にはせいぜい多くて二つしかついていないのに、この端末にはなんと六つもついている。
いったい何に使うのだろうか。

 タイキが興味津々に端末を眺め回していると、隣で呆れたような馬鹿にしたようなため息が聞こえた。
「楽しい?そんなの見て」
「ああ。すげえな。マジでこれ作ったの?」
彼女は頷いた。
「へー、さっきのキーボードもすごい速く打ってたし、もしかしてあんたって、天才?」
「あんたが馬鹿なんでしょ」
「ムカつくな。その言い方」
 タイキが少しムッとして見せると、彼女は初めて嫌味ではない笑みを浮かべた。
「あんた、名前は?」
「大貫 タイキ。そっちは?」
「………ミユウ」
「名字は?」
「別にいいじゃん」
なぜか彼女は視線を逸らして言った。
「まあ、いいけどさ」
 タイキは今までとは違う彼女の様子に疑問を感じながら、端末を返した。

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