《MUMEI》 約束それから数回、不意を突かれて抱きしめられたが 子供のじゃれあいのように騒いでは離れ、私が諌める という、コントのような時間が過ぎていった。 「そろそろ帰らないとね」 悠輔の睡眠時間を確保する為、その言葉は早い時間 に告げられた。 とても楽しい時間だった。 カラオケを出て道に出ると悠輔の姿がない。 振り返ると、道の手前で立ち止まって、こちらを見ているのだ。 「どうしたの?」 「うん・・・ 道に出ちゃうと、本当に美香子とお別れなんだなって思って。 美香子ともう会えなくなっちゃうような気がするんだ。 これが最後になりそうで・・・」 お人形のようなお顔とは不釣合いな、がっしりとした体を 小さくしながら、もじもじと話す悠輔を見た時、その姿が 若干ぶれて瞳に映った。 私、酔っているのかしら? 「そんなことないわよ。 また会おう。 約束する!」 「ほんとに?」 悠輔の足が一歩道へと踏み出された。 「はい、命綱」 私は右手を差し出した。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |