《MUMEI》
完璧?
キーンコーン…。
「気をつけ、礼っ」
「さよなら」
「翔矢っ、一緒に帰ろう」と20人の人だかるができる。
「ごめっ、今日は生徒会の会計しなきゃいけないんだ…ごめん」
「そっか、がんばって」翔矢の周りに人がいなくなる。
「榎原、会計って夏にやったでしょ?」
「俺さ、ホントは苦手なんだ…人に期待されること」
「えっ…」
「なーんてな、嘘だよ、俺みたいなカッコイイヤツみんな大好きなんだよな」
「私は榎原が嫌いよっ!だってさ…完璧じゃない」
「ありがとう」
「えっ…何で」
「俺、今まで親や友達がすすめるがままに、塾行って、ピアノとギター行って、華道も茶道もやって、高校も決めてもらった。なんにも一人じゃできなくて…」
「………」
「ちっともカッコよくないんだよ…。こんな顔もずっとコンプレックスだったんだ」と整ったアイドルばりの顔を歪ませる。
「泣いていいよっ」
「泣かねぇよ…」
榎原は後ろを向いて肩を震わせていた。

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