《MUMEI》 ぬくもり帰り、私は繋いだ手がいつまでも温かく感じられた。 恋・・・ というよりも、どこか懐かしい温もりに心が開いている。 可愛かったな・・・。 私が男性を可愛いと思うなんて、初めてのことだ。 その日の夜、珍しく夢をみた。 断片しか憶えていないのだが、景色が真っ赤で たおやかな大人の女性と子供が手を繋いで歩いて いる後ろ姿が見えた。 黒いシルエットで詳細はよく分からない。 ガコッガコッと下駄を擦りながら歩く音が響いている。 静かな街並み・・・。 「綺麗な夕日じゃなぁ」 「うん、真っ赤だね!」 「街が燃えているようじゃ」 「僕達も燃えちゃうかな?」 「うふふふふ・・・・どうだかなあ・・・」 静かな笑いと、無邪気な笑いとが重なり合っていた。 目が覚めた私は手のひらに生暖かさを感じていた。 昨日の悠輔とのデートが心に残っているのだろう。 「手、ちっちゃいね?」 そう、しきりに言っていた悠輔の手は大きく、私の手を すっぽりと包み込んでいた。 太い指が絡みついてくる感覚が蘇ってきた。 前へ |次へ |
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