《MUMEI》
殺人とレイプはNG?
「読者に犯人を憎んでもらおうと、犯人の残忍な部分を描く作者がいる」激村が力説した。「しかし読者は犯人を通り越して作者を憎む場合がある」
「だから寸止めテクが必要なんだ」
「火剣。まともな日本語を喋れ」
「うるせえ」火剣も意見を述べる。「犯人が崖っぷちに追い詰められて最後は自殺というのも好きにはなれないな。ありきたりというか、逃げの一手だ」
「一概には言えないが…」
「言え」
「…殺さずに結末を迎えるほうがインパクトがある。インパクトをつけようとだれかを殺すのは逆効果の場合がある」
「重要人物を殺してしまったら続編で出れませんからね」仲田が現実的な意見。
「死んだはずのキャラが生きていたというアニメもあるな。作品名は言わないが」火剣が笑顔で言った。
「オレも勧善懲悪というのではなく、常にひねりを加えたいと思っている」
「ひねりを加えたバックドロップ」
「言うと思った」仲田が呆れる。
「悪党だと思ったら意外に優しい一面があったり。そういう作品は好きだな」
「俺様も得意だぜ」再び火剣に鞭が入った。「敵の手に落ちてしまったヒロイン。手足を大の字に拘束されて絶体絶命の大ピンチ!」
「貴様にはそれしかないのか?」
「うるせえ。屈強な男たちに囲まれてもはや万事休す。しかし裸にはしない。レイプもしない。そこは紳士的だったりする」
「手足を縛る時点で紳士じゃないですよ」
「黙れ。女にしてみれば、いや読者もこれは素っ裸にされて犯されてしまうと期待するだろう」
「期待じゃなくて心配だバカ」
「そうだ、心配するだろう。ところが裸にもしないから当然犯されもしない。このチラリズムが燃え萌えシーンの秘密だぜ」
「日本語になってない」
「ヒロインの誇りは傷つきましたね」
「またまたWドロップキックか。俺様には通じねえ」火剣がまくる。「ヒロインを殺したり犯したりするのはNGと自分の中でルールを決めてそのルールを守るんだ。寸止めで助かるほうがエキサイティングなのはすでにリサーチ済みだ。参ったか激村?」
「別に参らないが、殺人とレイプがNGというルールには賛成だ」
火剣はカメラ目線で指を差した。
「DARO!」
「パクリはよせ」
火剣は止まらない。
「あるパニック映画でヒロインが最後サメの餌食になるクライマックス。あれは嘘! と目を丸くしたな」
「嘘…」仲田も顔をしかめた。
「逆に落ちたらそこは川でアナコンダの群れが待ち構えている。ところがヒロインが足を滑らせて川にドボン!」
「ダメですダメです」仲田が焦った。
「女の子はぎゃあああ、いやあ! と絶叫。まさか嘘だろうというクライマックス。しかし悪党も落ちて悪党のほうにガブリという結末」
「女の子は助かったんですか?」
「九死に一生だ。悪党のほうはアナコンダにガブリ寄りで寄り切られたが」
「そんなコミカルなシーンではないだろ。でも」激村が感心した。「火剣も映画から学んでいるんだな」
「見くびるな」

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