《MUMEI》

コート端。


そこにはモップを持ったコートキーパーが1つのゴールに対し2人ずつ座っている。


通常、


こういった仕事を任された場合は1年生がやらされるケースが多いが、


高総体準決勝ともなればそこは絶好の観戦場所へと早変わりする。



「…悪くなかったと思うけどな〜。」



この試合のコートキーパーを勤めていたのは市立工業高校。


計4人のコートキーパーの内1人に、


右45として試合に出ていた大下がいた。



「やられるとすげぇムカつくけど…


はたから見てるとあいつのディフェンスって実際すげぇな。


テキサス級だわ。」



「…テキサス級って意味はよくわかんね〜わ。


んで、


あんな吹っ飛んでちゃダメでしょ。


ディフェンス要員として筋力ダメダメでしょ。」



「まぁ結果として抜かれたけど…」



「?」



「んじゃ〜お前さ?
あの場面で右腕出せる?」



「ん゙…」



「俺はそこがすげぇって言ってんの。」



「…抑えれなきゃ意味ないっしょ。」
















………………………………














コート。



「ほら。」



「あ…」



呆然とする千秋を呼ぶユキヒロ。



「凹んでる暇はね〜ぞ。」



ポンッ…



「あ…うっす…」



落胆する千秋を励ますユキヒロ。


千秋に期待していたのはユキヒロも同じ。


ユキヒロも落胆していたが、


これで千秋が完全に負けたとは思わない。


次の千秋のプレーに、


更に期待をしていた。



「千秋〜。」



ベンチから千秋を呼ぶクロ。



「はい?」



「これで負けたらお前のせいだかんな。」



(えぇぇぇ…)

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