《MUMEI》

赤高ベンチ。



「…」



クロの表情は曇っていた。


話し掛けるなというような不機嫌な雰囲気に包まれていた。



(な…何怒ってんだこの人?)



(やっぱ千秋先輩のことかな?)



(結果的に村木先輩止めたんだから良しとしよ〜よ…)



ベンチに座る選手たちにもその空気は伝わる。


普段口数が多い分、


こういう時は不機嫌なのがまるわかりなクロである。














………………………………














「離しましょうッ!!」



センターラインを越える赤高。



「ユキッ!!」



「あん?」



ポジションに付く為に走りながらユキヒロに話し掛ける日高。



「協力してやったんだから今度はお前の番!!」



ビシッ!!



日高は人差し指をユキヒロに向ける。



(俺の番って…)



「…意味がわからん。」



ヒュッ…!!



「っ…と!!」



椎名からユキヒロにボールが回る。


中途半端な形で受け取った為、


いつものステップに勢いとキレがない。



(っ…ておいまさかあいつ…)



ディフェンスとの距離が遠い為、


必然的に視野が広くなる。



(早く『あれ!!』やんぞ!!)



視界に入るのは期待の眼差しで待つ日高。



(…マジかい。)

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