《MUMEI》

「俺、七生の体に憧れてたよ。筋肉つかないのがコンプレックスだった。」

湯を溜めている浴槽に小さく収まりながら二郎が呟いた。
頭を洗い流しているので背中越しに聞こえる。


「昔から二郎って、俺のこと好きだよな。」


「自分が持って無いものを備えてる人に惹かれてしまる法則?」

二郎は恋愛感情とかを難しく考えるふしがある。


「俺は二郎が俺を好きで好きで仕方ないって、言葉が溢れちゃうとこがめちゃくちゃ好き。」

好きと言うとつい、にやけてしまう俺は全く深く考えてない。


「ばか…………、七生が俺の体を好きって言ってセックスすると愛されてる気持ちになって、嫌だった自分の体が少し嫌じゃなくなる……気がする。」

自身の評価に関しては二郎は卑屈になってしまう。


「もっと自分のこと好きになればいいじゃん、俺にくれる好きは足りてるんだから二郎が自分に使っても罰はあたらないでしょ!
一生懸命になって俺の可愛い可愛い二郎を虐めすぎないで?」

二郎の魅力なんて語り尽くせないくらいいっぱいあるのだからそんなに追い詰める必要は無いのだ、と伝わればいいのだけど。
素直に受け止めて欲しい。

「恥ずい……あつくなってきた。」

二郎は両手で顔を覆い、浅い湯舟に身を攀らせて沈んでゆく。


「俺は嬉しくてキューンてする。」


「……七生って好意に慣れてて嫌。」

どういう意味だ?


「なんか、俺ばっかり恥ずかしがってまぬけだ。」

まぬけだなんて、全然可愛いのに。って、言ったらまた怒るんだろうなあ…


「二郎が欲しい言葉は俺がいっぱいあげるよ。」

幾らでも囁いてやる。


「七生の色香のある声が大好きって知っててすぐ強引になる…俺が最初の頃どんな気持ちで七生の指で掻き出されてたか知らないだろ。」


「それは、動けない状態だったし親切心だろ。」

いや、二郎の体内に指入れるの大好きだけど。


「……絶対、他のことも考えてたろ!今ちょっとだけにやけてた!」

顔に出ていたらしい。


「ええーっ、ごめ……」

――――ジリリリリリリリ

鼓膜を突き破るかのような防災ベルの音が鳴る。

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