《MUMEI》
史実と想像と裸と
「幕末など実話を描く場合、史実が残っている場合は史実に忠実に。しかし史実に書かれていないシーンは作者の想像力に委ねられるだろう」
「想像力勝負なら負けねえぜ」火剣が威張る。
「妄想力の間違いじゃないんですか?」
「そうだ妄想力だ」
「否定してくださいよ」
「裏の裏をかいたんだ。見たか仲田、俺様の上手ひねりを」
横道にそれそうなので、激村が強引に話を戻した。
「幕末のような近い歴史でも残っている記録は少ない。ましてや三国志の時代となると、作り手によってかなり変わる」
「ジャンヌダルクもそうですね」仲田が言った。
「今は写真も動画も記録も残っているから、何百年経っても正確に歴史が伝えられる」
「甘い。甘過ぎる!」
「甘太郎と言ったら飛ぶぞ」
先手を取って激村が火剣を睨む。火剣は焦った。
「バッファロー。俺様はプロだぞ。同じギャグを何度も連発しねえ」
「してます」
「うるせえ」
「ほら」
話が1センチも進んでいない。
「確かに火剣の言う通り、歴史の真実というのは視点を変えれば変わってしまう」
「ネットに書かれてあることもそうだ。プロレスの歴史なんか改ざんされまくりだぜ」
「そうだな」
「それより激村。何でおりょうは全裸で龍馬を助けたという伝説があったんだ?」
「そこへ飛ぶか?」
「飛んだんじゃねえ。幕末の話に戻したんだ」
「笑顔で話すのはやめましょう」
「仲田。昔から笑う4角には待ちかね福来たるって言うじゃねえか」
「ひねり過ぎで面白くない」
「うるせえ」
超ハイペース。激村は落ち着いて話した。
「おりょうが入浴中に敵が奇襲をかけて来て龍馬が危なかった。しかしおりょうが素早く着物を着て龍馬に敵の存在を知らせた」
「それがなぜか全裸のまま龍馬に危険を知らせた伝説が流行った。後の研究でそれはないことがわかったらしいが」
「火剣さんみたいな人が多かったんですかねえ」
「どういう意味だ仲田?」火剣が笑顔で睨む。
「願望を描き過ぎるのも考えものだ。歴史小説を書くとしたらよほどその時代のことを調べ尽くさないとな」
「はい」
「おりょうはエスパーだから裸くらいはへっちゃらだが」
「改ざんはよせ」
「間違えたエスピーだ」
「作品が違う」
激村は授業を乱す火剣を無視して先を急いだ。
「ヘタに歴史小説を書いて歴史マニアに『あ、この作者大して詳しくないな』と思われたらきつい」
仲田が真顔で呟く。
「厳しい」
「やさしい」
「年号や漢字。言葉の意味も含めて、記憶力に頼らず調べる。あと歴史小説を書くうえで一番大切なのは作者の歴史観だろう」
「歴史観?」仲田が聞いた。
「歴史から何を学ぶかだ。歴史から学ぶものは大きい。だから歴史を好きな人は多い」
「裸の謎解きがまだ終わってねえぞ激村」
「一人でやってろ」

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