《MUMEI》

 最初に彼を見たときはその金髪碧眼の見た目に圧倒されてしまって、その姿をずっと見ていたかった。

 それは綺麗な蝶に出会ったら、ずっとその舞う様子を眺めていたいという感覚に似ているような…。

 でも捕まえて自分の手元だけに置いておく為に針を刺して標本にしたい、とまでは思わない。

 その程度だった。

「この前の夜だって…」
「……」

 あの時は、眠くて抵抗出来ないままウトウトしながら彼のされるがままになってしまった。

「冬時が、受け入れてくれたと思った…」

 受け入れてるよ…本当はね、だから昨日の夜だってキミが僕の身体を好きなようにした時も抵抗はしていなかったのだけど。

 僕だって、優しくて格好良いキミが恋人だったらどんなにいいだろうと思う、弟でもいい。

 それに年下なのにこんなにも頼りがいのあるキミが、ここから居なくなってしまうと困ってしまう。

 ココに居てと言いたいけれど、これ以上は無理だと頭の中でサイレンが鳴る。


「冬時…」

 克哉君はまるで、これから捨てられる子犬のような悲しげな目で僕を見つめてくる。

 やめろ…そんな目をするなよ、まるで僕が悪いみたいじゃないか…。

「ダメだ…こんな事…」

 …こうやって教師と生徒が一緒に居て、こんな関係になっている事自体、悪いこと…になるんだ。

 だからこの関係を解消したいんだという事を、分かって欲しい…。

「…ん……ぅわッ///」

 そうやって色々と悩んで考え事をしている最中に、身長の高い彼がいつの間にか僕の胸に顔を埋めて抱きついてきていた。

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