《MUMEI》
夕闇のロッツェリオ○二
次の朝、ロッツェリオは、ベッドで、目を覚ますと、朝食のハムエッグの薫りで、身体を半分だけ、起こしていた。服を探して、周りを見回すと、ロッツェリオは、テーブルの上に、書類が乗っているのを、見つけだした。

近寄って、ひょいと、テーブルから、書類の束を持ち上げると、悪戯に今度は、目を光らせ凝視するように、書類を覗き込んでいた。

『神と混沌の始まり』

ロッツェリオは、確かに、戯曲のもとになる、すべての材料が、一夜にして、そのテーブルの上に乗っているのを、確認せざるをえなかった。

『光と闇の協奏曲』

と、題された、楽譜もついており、作品構成と、舞台の配置、例文にいたる、人の動きなど、手作業で造り出された、『戯曲擬き』が、其処に置かれていた。

『何だかな……。』

ロッツェリオは、芝居じみた行為に、間は、抜けたが、添え付けられた、オペラ劇場への、手紙があったことに感謝し、また、欠片ではあるが、自分にも、できるのだという、何処か馴れ親しんだ、土の薫りを感じていた。

後日、ロッツェリオは、オペラ劇場の、支配人ブルーロに、面会し、劇場の、見習い店員になることを、了解して貰った。

劇場員になった、

ロッツェリオは、父の感謝に、少しだけ頬を弛ませ、劇場の、掃除から、始める事にした。

『天は、二物を与えず。』
ロッツェリオは、高く昇った、夏の日差しに、目を輝かせていた。


ー了ー

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