《MUMEI》
SFのヒロイン
敵のアジトに潜入した清らかな女戦士。しかし見つかってしまった。多勢に無勢。あっという間に組み伏せられて、スタンガンで気絶。
「ハッ!」
目が醒めた。しかしビキニ姿のまま手足を大の字に拘束されていて全くの無抵抗。しかも屈強な男たちに囲まれている。
絶体絶命の大ピンチだ。
「あたしをどうする気?」
ヒロインの決めゼリフ。女戦士は簡単には降参しない。哀願は恥だ。
敵のボスが笑顔で迫る。
「心配すんな。いい子にしていれば酷いことはしない。でも生意気な態度を取るなら意地悪しちゃうぞ」
彼女のおなかを軽く触る。
「触るな!」
「何だと?」
顔を近づける男の顔面にペッと唾を吐きかけるのがスーパーヒロインの基本だ。
「いい度胸してるじゃないか」ボスはほくそ笑むと後ろを見た。「コング」
「アイアイサー」
コングと呼ばれた巨漢が出てきた。彼女は緊張した。
「この子に現実の厳しさを教えてあげなさい」
「ブラジャー」
敬礼ポーズをして笑うコングを、ヒロインは睨みつける。
「くだらねえ」
「言ったね。泣かすよん」
コングは彼女の腰をまたぐと、岩のような拳を、セクシーなボディに振り下ろす。
「ボカボカボカ!」
「うぐ、うぐ、うぐ…」
「ボカボカボカボカボカ」
まさか腹パンチ連打は予想していなかった。死んでしまう。彼女は弱気な目をコングに向けた。
コングがパンチを緩めると、彼女は叫んだ。
「おなかはやめて!」
哀願はギブアップだ。彼女は両目を真っ赤に腫らして横を向き、唇を噛んだ。
(悔しい!)

「火剣」
「バカだな激村。こっからがいいところなんだ。なぜ止める。本当に読者の心が読めねえヤツだなあ」
「読者のことを思うからこそ止めるんだ」
「バッファロー。エキサイティングなヒロインたちっていうタイトルでまじめな講義ばっかりじゃよォ、読者はみんな花粉症になっちまうぜ」
「関係ないじゃないか」
「不謹慎ですよ」仲田が睨む。
「仕方ねえ。授業を始めるか」
「貴様が言うな」激村は怒りを消して講義を再開した。「SFも何でもアリではない。空想なんだけど、その中でもリアリティの追求が必要だ」
「SFアニメのスーパーヒロインの度胸の良さはリアリティに欠けるぜ」
「何の話ですか?」仲田が焦る。
「女が手足を拘束された状態で敵に唾吐けるか?」
激村と仲田は返答するべきか困った。
「普通は弱気になって哀願するだろう。酷いことはしないでって」
「SFのヒロインは、基本的に普通の女の子とは違う。特殊能力を持っていたりする。つまり裏打ちされた自信だ」
「いいぞいいぞ」火剣が笑顔で乗ってきた。「ようやく白熱教室になってきたな激村」
「言葉を選べ火剣」
「不謹慎ですよ」
「うるせえ。この話題で大いに語ろうではないか。ガハハハハハハハ!」

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