《MUMEI》

「ぅう〜///兄さぁん…///」
「よしよし…」

お兄さんはそんなはるかの頭を包み込むように抱きしめると、まるで外国の映画のように頭や額にキスをしていた。

抱えられていたかなたもお兄さんの腕から降りると、泣きやまないはるかの頭を後ろから優しく撫でている。


お兄さんに抱きついて泣いてるはるか。

そのはるかをなだめるように、背中をさするかなた。

そんな双子をお兄さんは両手を広げて抱きしめていた。

仲の良いそんな姿を見ていると…兄弟ってのは、いいもんなんだなって思う。

俺には兄弟ってモンは居ねぇけど、親父の舎弟がよく出入りはしていた。

…兄ちゃん、と言うより優しさのカケラもねぇおっさんばっかだったけどな。

「武〜ボーッとしてどうしたの?」
「え、あぁ…何でもねぇよ…」

ぼんやりと考え事をしている最中、いつの間にかかなたが俺の側に来てお兄さんから貰ったお土産のぬいぐるみで俺にちょっかいを出してきていた。

「ねぇ武…兄ちゃ、怖い?」
「え…」

俺がお兄さんの姿を見た時から緊張しきりで何も言えずにいた事を察したのか、かなたはそんな俺の手を握るとギュッと腕に寄りかかってきた。

「べ…別に…」

そう言ってお兄さんの方をチラッと見てみると、俺達の様子をメガネの向こうから眼孔鋭く睨みつけてる……ような気がした。

= = = = = = = = = = = = = = = = = = = =

俺が小学生ぐらいになり、それまで過ごしていた日本から親父の故郷であるドイツに帰り、そこで生まれた双子の天使。

はるかとかなた。

はるかがハイハイしてこっちに来れば、かなたがひっくり返って向こうへ転がって行く。

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