《MUMEI》

俺みたいな成人男性がカバンにこんなぬいぐるみ入れてるってだけで怪しい、それだけでまるで中に何かありそうな雰囲気になってしまう。

「ごめんね…にいちゃ」

そんなしょんぼりしたかなたを抱き上げると「大丈夫だ、大きくなったな」と言ってそのまるで天使のようなその髪を撫でた。

「はるか…おいで」

向こうでモジモジしていたはるかを呼ぶと、手荷物のカバンの中から手のひらサイズの箱を取り出した。

「はるちゃんは何、何♪」
「開けてごらん皮のパスケースだよ、はるかは大人だからな」
「ぁ…ありがとう///」

箱を胸の前でギュッと握って、恥ずかしいのかなかなか目線を合わせてくれなかった。

「どうした?」
「ぅん…///」

何か元気が無いはるかを抱き寄せると、その強情にキュッと閉じられた唇に触れた。

「ぅ///」
「いつもみたいに笑え…はるか」

そう言うとはるかは堰を切ったように涙を流しはじめると、ギュッと俺に抱きついてきた。

「寂しかった…の…兄さん///」
「よしよし…」

後ろの方に居るかなたの方をチラリと見てみると、さっきあげたぬいぐるみを抱っこしながらあの武君と手を繋ぎ、俺達の方をニコニコしながら眺めていた。

= = = = = = = = = = = = = = = = = = = =

(にーちゃは、やっぱり格好いいなぁ…)

キリッとした目つきと輝く金髪でいかにも美形な兄ちゃは、身長も高くて歩くだけで周りが振り向いてしまうぐらい目立っていて、すれ違う女の子の黄色い声が聞こえてくるぐらいだった。

「あ…たけしもカッコいいよ///」
「え、何だよいきなり」

照れながら兄ちゃがくれたフラミンゴのだらんと長い足で、武の腕をぺちぺちと照れ隠しでキックした。

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