《MUMEI》
なれないこと
桜が舞っている。
すごく…きれい…
実羽は思った。

坂の上、緑に囲まれた校舎の前で桜が散るのを、実羽は飽きることなく眺めていた。
桜ってこんな風に散るんだぁ…

考えながら散る花びらを
掴もうとするが、するりと逃げられる。
周りは風の音しかしない。

おかしいなぁ…今日は入学式なんだけど…。
不安になって辺りを見渡すと、桜の木の向こうから一人の男の人が歩いてきた。
うちの高校の生徒だろうか…。

「ねえ!君!!」
「…なんですか?」

その男性が小走りにこっちにやってきた。短髪で黒髪だった。

「もう入学式始まってるよ!新入生だよね!?」
「えっ!?」

だから学生がいなかったのか。実羽は駆け出した。
がんばってねーと、後ろから男の人の声が追いかけてきた。
ありがとうと言ったが、聞こえたか実羽にはわからなかった。

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