《MUMEI》

「そっちの片は付いたようだな。弁天」
大量の血に塗れながら
だが表情一つ変えず傍らへと立ち位置を変える弁天
眼を見開いたまま倒れ伏す広川を見下ろし
「……こんな、ヒト一匹の為に。何故こんな事に……」
脚元にも散ってしまっている影の手を見
弁天が憎々げに呟く事をする
「……鬼姫は、いつの時代も鬼ばかりを狂わせる。それは永劫輪廻、仕方のない事だ」
「……これは、どうしますか?完璧に、消しておきますか?」
「……放っておけ。所詮こいつは(ヒト)の身だ。放っておけば何れ朽ちる」
自分が手を下すまでもない、と柊は肩を揺らしながら
だが広川の額に掛る前髪を掻き揚げ、顔を覗き込めば
せめて今だけはゆるり休め、と
まるで慈しむ様な優しい口付けを、柊は広川の額へと降らしたのだった……

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