《MUMEI》 仮面を取ればでも、そうはならなかった。 「迷惑なわけないじゃん。 俺は美香子が好きなんだぜ? メールしたかったらしていいんだよ。 美香子のしたいこと、俺は出来る限り受止めるから」 胸の奥がカーっと熱くなってきた。 これは悠輔との交流を始めてから、時々起こる現象だ。 恋に胸を焦がす・・・ というものでもないらしい。 全く関係のないシーンでも、時折胸が熱くなるのだから。 どこかで”特別な”キーを差し込まれたのかもしれない。 >ありがとう。 優しいね。 「美香子にだけ、優しいんだよ」 >それに応えられる私なら良いのだけど・・・。 何も返せない。 あれから私も考えたけど、何か考えが変わった訳でもないし。 悠輔の優しさに甘えて、私は傷付けるだけかもしれないのに・・・。 「美香子、俺にもっと甘えなよ? 美香子は真面目だから、何かされたらお返ししなきゃいけない って思うのだろうけど、俺からは受取りっ放しでいいんだぜ? それでいいんだってこと、俺が美香子に教えてあげる。 何も考えずに、ただ受取ってみなよ」 思考が・・・ 暫く、完全停止してしまった。 私、、、 もっと早くにあなたと出会いたかった。 そうね・・・同じ、20代の頃に・・・。 どうして今なのかしら? 悠輔は・・・ 私のこと、自立した女性と思ってる? そんなの上辺だけよ。 ずっと甘えられる誰かを探してきた。 いつも助けを求めている。 求めてくるのは、私が守らねばいけない人達ばかりだった。 もちろん表面上は「俺が守ってやる」と言っていたけど・・・。 寄り掛かったら倒れてしまう人に寄り掛かれる? 「欲しい」ばかりの人に・・・ その類が分かっていれば尚更、私の欲しいものなんて 言える筈なかった。 あなたともっと早くに出会いたかった。 もっと早くに出会えていたなら、私はここまで恋に不器用で なかったかもしれない。 悠輔・・・ 驚いた。 あなたは私の手の届かないものを持っている。 前へ |次へ |
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