《MUMEI》 抵抗らしい抵抗も出来ないまま、広川はされるがままでいるしかなかった 「また、いつか俺は狂ってしまう。そうしたら、また俺を救ってくれますか?俺だけの鬼姫」 耳元で囁かれたそれは余りに甘く、優しく 求めてくるその残酷な腕に、広川はどうしてか身を委ねてしまう 「今度は、もう離しません。瑞希、永遠を俺と共に……」 言葉も終わりに唇が重ねられた 息苦しさに意識も薄れて行く広川 完璧に堕ちてしまう寸前、槐へと腕を伸ばし 「……鬼、さんこちら。手の鳴る方へ」 槐の身体を引き寄せていた 広川に抱きしめられ、僅かな笑みを口元に浮かべながら 回された腕をやんわりと解き、その手を掬う様に取る 「……この手が鳴る処なら、俺はどこまででも付いて行きます。だから」 此処で言葉を区切り 槐はその手の甲へ誓う様な口付けを送り、そして 「……俺と、堕ちる処まで堕ちて下さい。愛して、いますよ」 首に滲むそこへと舌を這わせながら、広川の身体を抱きしめていた 捕らえられてしまった、もう逃げられない 状況理解が出来ないまま、そう感じてしまった広川の全身から力が抜けて 涙を流しながら、だが抵抗する事を放棄してしまった広川へ 槐は恐ろしい程に美しい微笑を浮かべて見せたのだった…… 前へ |
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