《MUMEI》

「わ…わりわりッ!!」



遅れて自軍コートに戻った日高。



「…」



関谷の目からは、
明らかな苛立ちが感じられた。



「…おい。」



ベンチから声を掛けるクロ。



「?」



全員が視線を向ける。



「…早くしろ。」



口数の少ないクロの様子からは、


言葉以上の怒りが感じられた。



(やぁっべ…)



日高は返事をすることができないまま、


コート中央へと向かう。



「ピッ!!」



ボールを受け取った千秋がラインを踏み、


攻撃権は再び赤高。















………………………………



赤高ベンチ。



「…何を勘違いしてんだろうね彼らは。」



頭をかきながらクロが呟く。



「何が?」



尋ねる安本。



「日高…と…ユキヒロですかね。」



「!」



(千秋の名前が出てこないとは意外だな…)



「さっきから…


ディフェンスも気ぃ抜いてるように見えるし、


あの攻撃も悪いパターンじゃないけどあの場面で必要だったかって考えるとそうでもないんです。」



「?」



「スカイで2人のプレーが印象付いてるんだからまずその警戒が解かれるのを待たないと。


だいたいにして相手のサイドのスピードは頭に入ってんだから無理に打つ必要はないでしょ。


今はまだ出すべきカードじゃなかったはず。


にも関わらず何であんなプレーをチョイスしたか?


答えは簡単。」



(やけに喋るな…)



「相手を舐めてかかったから。」



「ん…それは…日高が?」



「です。


スカイでいい気になったんすかね?


わかんね〜けど、


たった1回上手くいったくらいで逆上せあがれるほどの実力はあいつにはないですよ。


むしろ選手としてのスキルなら向こうの方が上。


僕たちはあくまでも挑戦者です。」



「…」



「あの態度…改善の必要ありですね。」

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