《MUMEI》

「ま…」



(またやられた…)



「…?」



「ナイッシューッ!!!!!!」



自軍コートに戻る秀皇。


呆然と立ち尽くす千秋を、


椎名はまた不思議そうに見ていた。


だが、


今のプレーを気にしていることは目に見えた。


結果的に言えば今の失敗は椎名から始まっている。


椎名は千秋に詫びようと近づく。



「…悪い。今のは俺がぼさっとして」



「また…」



「は?」



「また失敗した…」



「はぁ?」



「おいッ!!」



「え…?」



「返すぞッ!!」



「あ…」



走りだす椎名。



「千秋ッ!!」



「え…」



「早くしろッ!!」



「あ…!!」



ボールは赤高。



(千秋お前…)



「ピッ!!」



審判の笛が鳴り、
赤高はセンターラインを跨ぐ。



(お前…『失敗すること』にビビってんのか?)















………………………………



椎名の考えはズバリであった。


始めこそ榊に怯えていた千秋だが、


そこからプレーは決まらず、


恐怖は焦りへと姿を変える。


焦りから良いプレーが生まれるわけもなく、


そこに再び恐怖がプラスされる。


導きだされる結論は悪循環。


今の状態で千秋に何ができるわけもなかった。


千秋のように経験の浅い選手は特に試合の空気に敏感で、


そのまま素直に感じてしまう。


良い流れも…悪い流れも。



………………………………

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