《MUMEI》
教室にて
私は以前は私立の学校に行っていた。
その事を話すとなっちゃんはとても驚いたらしかった。

「えっ、じゃあ桜野って…?」
「うん」

そう。わたしの家は製薬会社。祖父が現在の社長で、私は一人っ子。

「じゃあ実羽ってお嬢様じゃん」
「へへ〜」

公立高校は何もかもが珍しく見える。廊下で遊んでる人も、走ってる人も、大声で笑っている人も、実羽には新鮮だ。

「何で公立にきたの?」

なっちゃんが尋ねた。

「…結婚、させられそうになったから」
「え、まじで」

今度は心底驚いたようだった。実羽は続ける。

「それで、まだ精神的に無理だって言ったの。だから公立高校で鍛えさせて、って」

だから今実羽は独り暮らしである。全く家事はできないが、家にいるよりいい。

「そーなんだ。いいじゃん独り暮らし!今度遊びに行こーかなぁ」

奈津がそう言って笑うと、実羽もつられて笑った。

こんな風に話せたの初めて…

すると扉からスーツの人影が入ってきた。

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