《MUMEI》
純愛のキス
好きだと気付いたのは、ほんの些細なことでした。

高校に入ってすぐ、部活紹介の時に先輩を一目見て、

(あっ、好き)

と思ったのが始まりでした。

笑顔がとても優しかったから。

語る言葉もとても柔らかかったから。

だから彼を追うようにして、生徒会へ入りました。

生徒会は多忙を極めていて、とても忙しくもやりがいのある仕事ばかりです。

先輩はどんな時でも笑顔を崩しません。

いつでも優しく微笑んで、怒鳴ったり怒ったりは絶対にしない人でした。

成績も優秀で、人望も厚く、カッコ良い人。

だからライバル…と言うか、わたしと同じように先輩を好きになる女の子はたくさんいました。

けれどどのコとも、先輩は付き合いませんでした。

…そのことに、ほっとしている自分が嫌いです。

わたしは昔っから人付き合いが苦手で、言葉も少ないので、友人と呼べる人はごく少数。

だけど先輩のおかげで、話しかけてくれる人がたくさんできました。

嬉しかったケド…その分、先輩を凄く遠く感じてしまいます。

わたしなんかが側にいて、迷惑になっているんじゃないかと…。

基本的に、生徒会副会長である先輩から何か言われない限り、わたしはどう動いていいか、分からないのです。

気を利かすこともできず、いつも部屋の隅で小さくなってしまいます。

話の輪の中にも中々とけこめないでいるのが、もどかしい…。

でもいつもそんな時、先輩はわたしを呼んで、輪の中に入れてくれます。

嬉しい反面、申し訳なささでいっぱいでした。

そんなある日のことです。

文化祭の準備で、生徒会がいつも以上に忙しく、そして慌しくなりました。

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