《MUMEI》
-2-
わたしでさえ、息つく暇なく動き回ります。

さすがに目が回ってきたので、生徒会室で一休みすることにしました。

誰もいないと思っていた生徒会室には、先客がいました。

先輩です。

イスに座り、眠っていました。

わたしは気配を消し、できるだけ足音を立てないように先輩に近付きました。

…かなり熟睡しているようです。

眠っている顔を見るのは、はじめてでした。

きっとファンの女の子達も見たことがない…寝顔。

思わず先輩の唇に見入ってしまいます。

薄く開かれた唇。

「………」

そこから少し声が出ているようです。

わたしは思わず顔を近付け、耳を傾けてしまいます。

「…好きだ」

「えっ…」

思わず声を出すと、先輩の瞼が震えました。

いけない!と思って、慌てて先輩から距離を取りました。

「んっ…? アレ? オレ、もしかして寝てた?」

「はっはい。でもわたしは今来たばかりなので、どれだけ眠っていたのかは分かりませんが…」

「そうか。いや、ゴメンゴメン。ちょっと疲れててさ」

そう言いつつ目元をこすり、立ち上がります。

「おっと、もうこんな時間か。急がなくちゃな」

机に置いていた書類を持って、先輩は生徒会室を出て行こうとしました。

「あっ、そうだ」

「はっはい」

先輩は振り返り、真っ直ぐにわたしを見ます。

「オレ、何か寝言言ってた?」

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