《MUMEI》
-3-
どきっと心臓が高鳴りました。

「いっいえ、何も聞いていません」

頭と両手を振ると、先輩はフッと笑いました。

「そうか、なら良いんだ」

いつもの笑顔で、先輩は今度こそ生徒会室を出て行きました。

「ふう…」

本当はウソはいけないことだけど…正直に、あの寝言のことを言う気にはなれませんでした。

先輩はあの時、確かに、

「…好きだ」

と言いました。

それはつまり…先輩には好きな人がいるということです。

…胸が苦しい。

ぎゅうっとして、息ができない…。

わたしは一人、生徒会室で声を押し殺して泣きました。

それからというもの、わたしは生徒会の仕事に打ち込みました。

動いている間は、先輩のことを忘れられるから…。

でもムリがたたったのか、わたしはある日、倒れてしまいました。

意識を失い、その場にバタンッと…。

次に目を覚ましたのは、額にヒンヤリするものを感じたからです。

「あっ、気付いたか?」

「先輩…。あれ、わたしは…」

辺りを見回すと、どうやら保健室に運ばれたようです。

「いきなり生徒会室で倒れて、オレが運んだんだ。ゴメン、具合悪かったんだな」

うっ…!

よりにもよって、先輩に運ばれてしまったようです。

「いっいえ…。わたしこそ、体調管理を怠ってしまい、すみませんでした。もう大丈夫ですから」

そう言って起き上がろうとしたわたしの肩を、先輩は優しく止めました。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫