《MUMEI》
-5-
「うん。でもキミがそう感じる必要はないんだよ?」

「えっ…」

思わず顔を戻すと、先輩の顔が間近に迫っていました。

「だってオレの好きな女の子って、キミのことなんだから」

にっこり微笑むと、先輩は軽く私の唇に触れました。

…これって…!

「なっ!」

キス!?

両手で唇を隠します!

顔が音を立てて、赤くなります!

「…ホントに素直で可愛いなぁ」

今度はいきなり抱きつかれました!

あまりの展開の速さに、目が回ってきました…。

「キミ、オレにスゴク懐いてくれるし、素直で可愛いし。ホントにたまらない」

先輩はそう言って、頬をすり寄せてきました。

「わわわっ!? せっ先輩、いつからわたしが先輩のこと好きだって、気付いたんですか?」

「ん〜。何となく? 気付いた時にはオレもキミのこと、好きだったしね。何せ夢にまで見るぐらいだもの」

あっ…あの寝言って、わたしの夢を見てたから?

「でもせっかく現実世界でも両想いになれたんだから、言ってほしいな。あの言葉」

間近で微笑まれ、言葉に詰まります。

だけど精一杯の勇気を持って、わたしは言いました!

「すっ好きです! 先輩!」

「―うん。オレも好きだ」

先輩の頬が赤くなりました。

再び近付いてくる唇。

わたしは先輩にしがみつきながら、そのキスを受け止めました。

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