《MUMEI》
解除の音
インターネットは通じていた。


まだ体の震えを感じながら、出会い系サイトにアクセスをする。
ここなら、過去の履歴からメールが送れるはず。


私は悠輔の無事を祈った。 


程なくしてメールは届いた。



「うん、大丈夫だよ。 美香子は大丈夫?」


この言葉を確認して初めて、散乱した部屋の有様に目が向く
ようになる。



どこから手をつけよう?


とりあえず、コーヒーまみれになった靴下を脱がなくては、ね。


相変わらず続く余震の中、悠輔からの新しい着信を読む。



「美香子も無事だったのだね。  良かったよ・・・
美香子を守ってあげたい。
今はなにもできないけど。 気をつけるんだよ★」



少しづつ・・・ 少しづつ・・・ 
心身を落ち着かせて部屋の片付けを始めた。


都内のワンルームに住む私は3時間程度の片付けで収集がついた。
悠輔は本来であればそろそろ出勤の時刻であったが、電車が
止まってしまい、自宅待機をせざる得ない状況となっていた。




この夜、私達はずっと、メールによって繋がっていた。



「美香子、ケガはなかった?」


>ケガは大丈夫。 悠輔は?


「俺も平気。 これから余震も続くし、一人でいるのは危険だよ。
誰か頼れる人、近所にいないの?」


>都内マンションでの一人暮らし。
近所付き合いもないわよ。(苦笑)
実家は電車でなきゃ行けない距離だし・・・無理ね。
一人様子をみるわ。


「そなんだ。  じゃあ本当に気をつけるんだよ。
・・・美香子、一緒にいたい。」



TVでは電車が止まり、帰宅出来ずにいる人で街がごったがえ
している映像や、地震がまさに起きた瞬間を繰返し流している。


数時間前、心底湧き上がってきた恐怖はまだ私の中にあった。

どうしようもなく心細い気持ちでいっぱいだった。
何かに配慮する余裕など、こんな時に持てるだろうか。
そして伝えてしまった。 


封印されていた・・・ 恋心。


>私も一緒にいたいよ。 傍にいてほしい。

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