《MUMEI》 今日から同居生活が始まる。 余命1ヶ月と診断された17歳の娘を、よく男と住まわせるよな。まー必死に頼み込んだのは俺だけど。 はじめはただ呆然とするばかりだったが、本当に俺たちに1ヶ月しか残されていないなら、その1ヶ月間すべてをアイツと共に過ごしたいと思った。 やらしい悪戯をされるからヤダ、と常々俺の部屋の敷居をまたがなかったアイツに、絶対やらしいことはしないからと約束して(果たせるかどうかは知らない)、この同居生活をはじめることにしたのだ。 ヤバイ、緊張する。 服装は『きれいめお兄さん』を意識してクールだけどちょっとカジュアルに、髪型は造作の入った無造作ヘア、髭もそったし、香水は気にならない程度にブルガリブラック、よし、こんなもんだろ、うん。 付き合って1年3ヶ月、バイトで知り合ったイマドキな女子高生に見合うように、オシャレはかなり研究した。 ピンポン、 あわてて玄関へとむかう、あくまで余裕に見えるように、冷たいドアノブをゆっくりまわして、あれ? 「どしたのあつくん、オシャレしてー」 そこにいるのは、よれたスウェットの上にモコモコのジャンパーを着た彼女だった。 いつものぱっちりおめめはぼんやりして、いつもくるくる魅惑的な髪はボサボサのストレート。 俺、の彼女、は? イマドキの女子高生はどこへいったんだ? 「ねぇ何ぼんやりしてんの、早く入れてくんない寒いから」 「あ、あぁ‥‥」 コンビニ袋片手に口無しニャンコの健康サンダルを脱いで、さっさと部屋に入っていく。 「わー部屋きれいだねー」 そうか、そういうことか。 一緒にくらすと言うことは、相手の嫌なところも悪いところも目の当たりにするということなのだ。 こんなことに気付かないとは俺はなんて夢見がちドリーマーなんだ。 同居生活1日目は、予期せぬ絶望からはじまった。 30分もすれば彼女のすっぴんにも慣れたが、化粧の大事さに気付かずにはいられなかった。 前へ |次へ |
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