《MUMEI》

「俺が人間でいられるのは、後三時間という事か?」
リョウは天井に向けていた視線を有馬に移す。

「まぁ、そういう事になりますが…」

有馬もリョウに視線を移す。

しかしその顔には、いやらしい迄の笑みを浮かべていた。

「でもリョウ君。君はもう既に、今の時点で人間ではないじゃないですか!」

「てめぇっ!!」

―ガシャーン!!―

「きゃあ!」

檻を壊さんばかりの勢いで、リョウが鉄格子にしがみつく。
その音で加奈子は心臓が飛び出るかと思うくらい、ビックリしてしまった。

それだけ今のこの非現実的な情況に、神経過敏になっていたのだ。

しかし有馬はそんな事気にも止めず、リョウの怒りを無視するかの様な態度。

両手を広げ、まるで外国人を思わす程のオーバーなリアクションをとり、今度は檻の回りをグルグル歩き出した。


「だってそうでしょう?その手見てみなさい。それが人間の手ですか?」



やめて…



「ああ、立派な翼。我々人間にはそんなモノ生えてませんから。羨ましい…。」



いや…



「それと…おやおや…。口元が血まみれですよ?美味しかったですか?さっきの人間は…。」


「もう辞めてぇぇぇ!!」


有馬の一言一言に何も反抗出来ず、ただ崩れ落ちていくリョウを見てられなくて





加奈子は叫んでいた。




.

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫