《MUMEI》
前進
くすっ。


緊張を帯びた胸の辺りが、ふわりと開かれた。


そうよ、大人の諸事情さえクリアーすれば・・・
2人で乗り越えることができるとしたら、何も問題ないじゃない!


私達は両想いなのだから。 そうでしょ?



>悠輔、一旦感情を横に置いて、何故私が心の内を話せない
のかを考えてみて。
今の状況で何が足りないから、想いを伝えられないのか・・・。
私の言う、大人の諸事情って何だっけ?
本気で私を愛しているのなら「愛してる」と伝えるだけじゃなくて
本気でその辺を考えてみてよ。


テンポ良い送受信に少しの間が空いた。
その時間は誠実さを感じさせる、落ち着いた、心地の良いものだった。


受信を確認する。


「覚悟、かな。  必要なことも足りないことも。
美香子の立場もよく分かる。
だから、俺は覚悟を持って美香子と接するよ。
結婚も美香子自身を受け止めることも、自分自身の弱さも。
その全てを覚悟して美香子を愛する。
覚悟することは不安もあるけど・・・
でもそれ以上美香子を想う気持ちが強いんだ。
美香子は?
美香子は・・・俺を受け入れてくれる・・・のかな」


12歳年下の好きな人から言われたかった言葉。
それは胸を溶かすような情緒的言葉よりも「覚悟」という意志だった。


『あなたが本気で覚悟を決めたなら、きっと・・・』

心の奥で、小さく呟いた。



>受け入れるよ。 悠輔のこと。

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