《MUMEI》

山男を自らの魔法で飛び降りさせた善彦は、階下から悪い報せが聞こえて来ないかしばらく耳をすましていた。

着地に失敗したような音や大きな叫び声が聞こえない事から、どうやら大きな問題は無かったようだと解釈する。





先ほど振り回されたせいで、倒れた机と机の間に引っ繰り返されたままの体勢。
痛みで感覚が麻痺していたから気付かなかったが、右足は椅子に乗っている。



「……チカラには後で礼言わなきゃな。」



そう呟くと、善彦は腹筋を使って勢いよく起き上がり、片膝をついた状態で、自分を縛りつけている「何か」を引っ張る。




―我ガ望ミ叶エルカ




引っ張られた事に気付いたのか、また片言の言葉が聞こえてきた。


「…ったく、"望み"だけで分かるかっ!」


縛りつける何かの先にいるであろう見えない相手―ハラショウ―の位置を予測し、そこに向かって善彦は一気に魔法を解き放った。

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