《MUMEI》 自分榎原の話を聞くと辛い。だって、本気で自分を好きになってくれる人がいないと思ってる。 絶対、そんなことないのに。 私は榎原が大嫌いだった。 顔だけで中身は何もない奴だと思ってたから。 でも、本当は優しかった。いつだって。 榎原は苦しんでる。 「榎原は辛い?」 「何が?」 「誰かが思ってくれること」 「面倒だ」 「面倒?」 「そう。悪い?」 「悪いよ。悪い。榎原は逃げてるんだよ」 「逃げてる…?」 「逃げてるよ。相手の気持ちに。榎原はとりあえずうまくやればいいって思ってるでしょ」 「かもな」 「榎原が本当の気持ち言わないから…皆が本気でぶつかれないんだよ」 「俺の本気の気持ち?」 「自分が得するように 楽をしてみんなの期待どうりに動いちゃダメ。時にはぶつからなきゃ」 「別に」 「いつもイイ奴で居なくていいんだよ」 「今までそんなこと言われたことなかった」 「そうだろうね」 「何で…お前は違うの?」 「あんたが泣いたからよ」 「…」 「泣いてる時に初めて見たの榎原の弱い所…カッコよく生きなくていいんだよ。涙見せたっていいよ…榎原はもっと甘えていいんだよ」 「俺は汚いよ」 「うん」 「全然イイ奴じゃないよ」 「うん」 「それでも…?」 「うん。素直に生きていいんだよ」 「…」 「泣きたい時には泣けばいいよ。辛い時にだって声あげて泣いていいんだよ」 「…」 榎原は自分自身を好きになれなかったんだ。 誰かに気づいて欲しかったのかもしれない。 本当の本当の俺は…そんなに優しくもないし、カッコ良くもない。 ただ普通の男だって。 誰かに助けて欲しかったんだね。 榎原の本当って何だろう? 学校で皆に振りまく笑顔は偽物―。 じゃあ…生徒会の時の意地悪? でも、私が辛くないように 本当の本当の俺は…そんなに優しくもないし、カッコ良くもない。 ただ普通の男だって。 誰かに助けて欲しかったんだね。 榎原の本当って何だろう? 学校で皆に振りまく笑顔は偽物―。 じゃあ…生徒会の時の意地悪? でも、私が辛くないように…気遣ってくれる。 彼女に対する冷たい目? 榎原は自分で本当の自分がわからないのだろうか―。 だから辛いのかもしれない。 自分を見つけられないんだ。 前へ |次へ |
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