《MUMEI》
涙と悲しみ
そして

江上は続けた。

「しかもね、

私は彼女に酷いこと言わせちゃったの。

彼女は、きっと

・・・・・そんなこと言いたくなかったのに。

私ね、酷いこと言われて

悲しかった。

・・・・・でも、私が言わせてしまったの。

そのことが

もっと・・・・・もっと

悲しかった。」

そう言った江上の目からは

数え切れない程の涙と

計り知れない悲しみが

落ちていった。

俺は、何も言えなかった。

ただ江上の目から

落ちる涙と悲しみを

1粒1粒すくっていくことしか

出来なかった。

そして心の中で

[江上は他人を

責めることができないんだろうな。]と思った。

人は皆、楽な方へと

流される。

自分を責めるより

人を責める方が楽だ。

でも、江上は違うのだろう。

人を責める方が

辛いのだろう。

だからずっと自分だけを

責め続けてきたのだろう。

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