《MUMEI》 黒烏の残したメッセージを見た二人はがく然とした。 マークは、本当にただ殺されただけだったのだ。 黒烏にはペンキの缶を開けたような気持ちしかないだろう。 「……とにかく、所長に報告しに戻ろう。」 ミツはそういって、血が滲むほど握りしめられた瀧の拳に触れた。 はっ、とした様子で瀧がミツの方に振りかえる。 「ミツ……。」 「帰ろう、瀧。あの子も下で待ってる。」 しばらくして大きく息をつくと、 「そう、だな、わかった。」 瀧はそういって携帯を取りだし、佐伯に電話を掛けた。 そんな瀧から視線を外し壊れた窓からミツは外を見た。 己の心と同じような重い灰色の空が広がっていた。 前へ |次へ |
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